安全基地という言葉をよく耳にすると思います。子どもは「親」とアタッチメントを形成することで、3つの基地を得ることができます。
ひとつ目は『安全基地』。これは恐怖や不安、怒り、悲しみなどのネガティブな感情を持ったとき、「親」に守ってもらえるという認知(頭の中に浮かぶ考え)・行動(ふるまい)の基地です。
ふたつ目は『安心基地』。これは「親」と一緒にいるとき、「おちつくな」「ほっとするな」などのポジティブな気持ちを感じさせる感情の基地です。
そしてみっつ目は『探索基地』。安心感を得たあと「親」から離れて行動し、その後また「親」の所へ帰ってくるという一連の行動をする基地のこと。 自分の体験を「親」と共有し、受容してもらえることでポジティブな感情が増加し、ネガティブな感情は減少していきます。
ネガティブな感情から守ってくれる『安全基地』と、ポジティブな感情を生じさせてくれる『安心基地』を土台に、自立活動で生じたポジティブ感情を増やし、ネガティブ感情を減らしてくれる『探索基地』が形成されることで、自己効力感と感情コントロールの方法が身につき、精神的な自立が可能になります。
子どもは何かネガティブな感情になったとき、守ってもらえると思って親の元に行きます。
そこで親が子どもを抱きしめたり、安心できる言葉がけをすることで、気持ちが落着き安心します。
そしてポジティブな気持ちになれば親から離れて遊んだりさまざまな体験を自らしようとします。
また何かあれば、見守ってくれている親の元へ行けばよいという安心感があるので行動ができ、次第に行動範囲も広がります。親は、「いつも見ているよ、何かあればいつでもおいで、待ってるよ」という思いで子どもをみてあげたいものです。このように、くっついては出かけ、またくっつきに戻るという経験は、子どもの「心の力」になり、戻れる基地があるという確信がアタッチメントの拡大につながります。このような安定したアタッチメントが心の力(非認知能力)を育みます。
(参考)厚生労働省令和4年度子ども・子育て支援推進調査研究事業 日本総研「アタッチメント(愛着)」
アタッチメントとは、子どもが不安や恐怖を感じたとき「親」にくっついて安心感を得ようとする本能的な欲求や行動のこと。 赤ちゃんが泣いているときに私たち親は抱き上げて一生懸命あやして赤ちゃんを安心させようとします。 こうした当たり前のくり返しが、アタッチメントを発達させ、挑戦する力、忍耐力などの非認知能力を身に付けることになります。
親は探索に出かける子どもを応援してあげられること、そして何かあったとき子どもが確実に戻れる存在であることが大切です。 そのようなアタッチメントはとても重要ですが、親と子の関係はアタッチメントとしてとらえられるものだけではありません。 不安な気持ちをなだめるだけでなく、「楽しい気持ち」を一緒に経験できること。子どもと一緒に遊ぶ、一緒に楽しむことも大事にしていきたいものです。 子どものワクワク感に応えたり、ふれあい遊びをしたり。子どもがうれしそうな表情をしたり喜んでいたりするときには、気持ちに言葉を添えることもしていきましょう。 「気持ちいいね」「楽しいね」「嬉しいね」「ワクワクするね」「幸せだね」。子どもたちが気持ちを言葉で表出できるようになることも大切にしていきたいものです。
アタッチメントは食欲や睡眠欲と同じように、生まれながら人間に備わっている本能的な欲求です。 人は誰しも「不安や恐怖を感じたときに誰かと心がくっつくことで安心しようとします」。 幼少期にこの「安心感」が満たされることが、子どもの健やかな発達や、大人になってからも人間関係や心身の健康に影響を与えることが分かってきています。 アタッチメントは一生涯にわたって続くもので、何歳になっても大切にしていきたいものです。乳幼児期はその土台作りをしています。