アタッチメントは特定の人と結ぶ情緒的な(こころの)絆です。「特定の人」は「親」とは限りませんし、アタッチメントは親でなければ結べないものではありませんが、ここでは「養育者」、中でも「親」を「特定の人」としました。
アタッチメントは、恐れ(不安や危機)を感じたときに子どもから発するシグナル(泣きや発声、親の所へ行くなどのアタッチメント行動)に対して親が何らかの対応をすることで、危機感や不安が低減されたり調節されたり取り除かれたりして安心し、ニュートラルな状態になり、そしてまたネガティブな情動状態が起こりシグナルを発し…といったくり返しで発達していきます。危機や不安を感じるネガティブな情動は日々日常の中でも起こります。知らない人の接近、親の姿が見えない、知らない場所、体調不良や空腹、さまざまな不快など。そのときに親から何らかの対応をしてもらい調整されることがくり返されることで、次第にアタッチメントが発達します。
アタッチメントの標準的な発達は4段階に分けられます。一部にはなりますが簡単に紹介します。
第1段階は生後0~2か月。子どもは生後間もない頃から「人」の顔や声に関心のある行動をとります。表情や声に注意を向け共鳴するように反応します。 近くにいる人に対して定位行動(追視する、声を聴く、手を伸ばすなど)や、信号行動(泣く、クーイング、微笑むなど)といったアタッチメント行動を向けます。人の顔を見たり声を聴いたりすると泣きやんだり、遊んでくれたりあやしてもらえたりすると体全身を使って喜び興奮を示したりします。
第2段階前半の2~6か月は、誰に対しても友好的に振る舞いやすいですが、日常よく関わってくれる人に対しては特にアタッチメント行動を向けます。 相手に応じて分化した反応を示します。第2段階後半の7~12か月ごろは、後追いしたり再会で喜びを表したり、その人を中心に探索的な行動をとれるようになります。 その子らしいパターン化された行動となり、好みのアタッチメント対象者(ここでは親)が存在します。 分がハイハイや歩行で移動可能となったことや、言葉が使用できるようになることから、子どもから親を求め、その人との近接を維持できるようになります。
第3段階前半の12~18か月ころは、アタッチメントの個人差がほぼ成立します。多様な種類の活発な接触行動が明確になります。 親との間で安定したアタッチメントが形成されていると、親を安心基地として利用し、周りの環境や外界に興味をもって探索が活発になります。 見知らぬ人に対してはだんだんと注意深く対応するようになり、危機感を持ったり、逃げたりするようになります。 第3段階後半の1歳半~2歳半では、「親」は永続的な存在であり、具体的なやり取りから、関係を心に表象(イメージ)することへ徐々に移行していきます。 内的作業モデル(※)の形成がはじまります。
そして第4段階(2歳半~5歳ころ)の5歳ごろに内的作業モデル(※)は成立します。
これらの発達段階には個人差があり、子どもがアタッチメント行動をとったときの親の対応いかんで、アタッチメントの発達があまり進まないということもあります。
(参考) 数井みゆき 編著:アタッチメントの実践と応用 医療・福祉・教育・司法現場からの報告. 誠信書房.2012
※内的作業モデルは、アタッチメント対象(ここでは親)との情緒的な交流(相互作用経験)が内部に(表象=イメージとして)取り込まれたものになります。
幼少期の子どもは親に物理的な接近をして不安を軽減したり、安心感を求めようとします。
認知の発達でイメージする力がついてくると、親を表象(イメージ)することで緊張を和らげたり、探索空間を広げることができます。
例えば、何か不安なことがあると大切な人のことを思い浮かべることで緊張がほぐれたり、何かに挑戦した後には大切な人に報告しようと思うなどがあります。